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「あのね、部長…」
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「どした? 何かあったのか?」 |
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「『だて美味』のことなんだけど…」
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「ま…まさか辞めたいって言うんじゃ…!?」
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「ううん、たまには女のコたちがキャピキャピ言ってランチを食べてるようなお店にも行きたい…」
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「ホッ。なんだそんなことか。それなら今から行く店がちょうどそんな感じだよ」
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「ホント? やったぁ〜!!」
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大酒飲みで大飯食らいとはいえ、かりんだって一応乙女、ギャルが集うカフェか何かでオシャレな食事もしてみたいのである。ウキウキのかりんを乗せて、車は高松駅の程近く、ボウリング場の角を曲がって進んでゆく。
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「もう着くよ」
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「そっかぁ、ボウリングとかで遊んだあとに、みんなでお茶しながらワイワイやる店なのね」
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「ま、そんな感じかな。はい、ここで〜す」
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| かりんの目に写ったのは、デカデカと店名の入ったノレンがたなびく定食屋『龍ちゃん』。 |
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「おいっ! こりゃ、どういうこった! どこにギャルが集ってお茶してるんだっ!!」
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「いるじゃん、ホラ」
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「あ…」
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| 店内では確かに若いギャルたちが何人も食事をしている。というか、若いあんちゃんからおじさん・おばさんまで、客層は幅広い。しかも、みんなが食べている料理がやけにおいしそうなため、かりんの興味はすでにそっちに向いていた。切り盛りしているのはハキハキとして声も大きく元気なおかみさんと、やんわりおっとり物静かな大将。両人とも人当たりがよく、このあたりも人気の秘密なのだろう。 |
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「ま、まあ、おなかも空いてることだし、お食事にしましょうか」
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「お、急におとなしくなったな…。オレ、ハンバーグ定食。大盛りで」
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「かりんはカツ丼!」
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「普通盛りにしとけよ。後悔するぞ」
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「何で? 丼モノなら一気に食べられるから大丈夫なのにぃ」
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「まあ、見てろよ」
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| 程なくやってきた定食を見てアゼンとするかりん。トゲオの分のご飯が異常な量に盛られているのだ。 |
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「そんな状態のご飯、『まんが日本昔ばなし』でしか見たことないよ…」
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「だろ? カツ丼も大盛りにしてたら大変なことになってたぞ。しかもこの大盛りはなぁ…」
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「な…何?」
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「食べるときのご飯とおかずのペース配分が極めて難しいのだっ!」
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「ホントだ。向こうの席の人なんて、キャベツをおかずにして食べてる…」
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「メインをバクバク食べてるとああなるのだ。反対側の客なんて、あまりのご飯の量に涙目になりながら食ってるぞ」
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そんなお客たちをしりめに、2人のハシはどんどん進む。
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「ああ、うまっうまっ! 焦げ目がつくまでじっくりと焼かれたハンバーグに、深みとコクがあるオリジナルソースがたっぷりで…こりゃタマラン!」
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「野菜もどっさりで栄養バランス満点ね。さて、かりんのカツ丼はっと…」
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カツ丼も、普通盛りであるにかかわらず、すごいボリュームである。
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「衣に封じ込められた肉のうまみが、かんだ瞬間に口の中で広がるよう! ふっくら卵も絡み合って絶妙〜!!」
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そう、『龍ちゃん』はどのメニューもボリューム満点、味もピカイチなのだ。最初は感激しながら食べていた2人だったが、10数分後…。
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「む…う…」
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「た…食べても食べても減らないよう…」
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そこには、キャベツをおかずにひたすらご飯を食べるトゲオと、涙目になりながらカツ丼を口に運ぶかりんの姿があった…。
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